翻訳・要約担当者からのまえがき
注意1:文の流れ等が悪く、論理的に乱暴であったり無礼に見える箇所もあるかもしれません。それらは私の能力不足によるものです。そう感じる方がいらっしゃいましたら素直に謝ります、ごめんなさい。また、興味のある方は原文を全部読んでみてください。
注意2:基本的に英語圏の開発者向けに書かれた内容であり、内容にはそれはちょっと、と突っ込みたくなる箇所も (多々) ありますが、「別の視点を得る」ことを目的として一読いただければ幸いです。
MADE IN JAPAN:西洋の視点から見た日本のゲーム開発
Ryan Winterhalter 著
Gamasutra
2007 年 4 月 25 日
URL:http://www.gamasutra.com/features/20070425/winterhalter_01.shtml
日本のゲーム業界の体制とデザイン手法は北米や欧州と大きく異なります。 また、日本のゲームスタジオには外国人社員がほとんどいません。
マイノリティである彼らは、あの悪名高い長い労働時間や厳しい要求に加えて、文化的/言語的な違い、日本人上司や同僚からの要望とも向き合わねばなりません。 全体から見ると非常に少ない外国人労働者ですが、日本で働く彼らは日本式の業務文化、作業慣行、ゲーム開発に携わる経験を通じて、西洋的手法とは異なる考え方を発見し、身につけています。 基本的な文化/言語的な相違点に加えて、チーム編成手法や組織の上下関係、デザイン哲学などの相違点が、彼らの経験をより特殊なものにしています。
多くの人達にとって、「日本」とは「ゲーム」の同意語です。 「日本の貢献がなければ、今日のゲーム業界は今日のような姿ではなかったかもしれない」とは、Chris Kohler 氏の日本のゲーム業界に関する著書、「Power Up」の序文で Silicon Nights 社の Denis Dyack 氏が書いたことですが、 海外から日本に飛び込んできた彼らこそ、ゲーム業界の日本的側面に関する最も正確な視野を持っているのかもしれません。 今回は、そんな「ガイジン開発者」3 人のインタビューを紹介していきます。
JC バーネット(仮名)氏は東京の某社に勤務する英国人です。 彼のブログ「Japanmanship」では、日本のゲーム業界に関する彼の考えや日本文化の観察などが紹介されています。 日常生活や日本人のガイジンに対する態度に対する鋭い洞察力、そして(彼が「ゲームマンシップ」と呼ぶ)その態度に対する彼の応対方法が話題を呼び、ブログは日本に住む外国人の間で大人気となりました。また日本式業務についての簡潔で深みのある意見は、日本国外に住むゲーム開発者やゲームマニアの間でも評判となっています。
グレッグ・タバレス氏は業界歴 20 年のベテランです。 彼の携わったタイトルには、「Sid Meier's Pirates」、「Wild 9」「Crash Team Racing」、「Loco Roco」などがあります。 東京で 7 年勤務した彼は、最近米国に戻ってきました。
最後にディラン・カスバート氏。彼のキャリアは英国の Amiga development で始まりました。 任天堂の目に留まって横井軍平氏のチームに加わってからは、最終的には StarFox の制作にも参加し、米国と日本の Sony でも勤務しました。 2001 年、京都で Q Games を設立。最近、PlayStation 3 用カジュアルゲーム「Pixel Junk」を発表しました。
日本への道
「私の場合、日本で働きたいというよりは、生活したいという気持ちのほうが強かったと思います。 少しでもオタク要素があれば、東京に惚れこんでしまうのは簡単なことですから。 なので、私の来日のきっかけは東京に住みたい!という願望が基になっています。 日本で働く、という決断はそれに伴う必然だったんです」と、バーネットは言います。
最近の大学キャンパスでは、日本で働くことを熱望している学生を見つけるのは難しいことではありません。 ゲームへの興味が日本への興味と繋がっていることはよくあります。 いつの日か日本に住んでみたいと願う学生はたくさんいます。 「業界歴の長い開発者はもう少し現実的で、長時間労働の噂なんかを心配しますが、若い人やこれから業界入りを狙ってる人なんかの場合は、(日本行きを)とても熱望しています。 ちょっとした盲目的信仰ですよね。 みんな "宮本さんのチームで次のゼルダとか、ミリオンヒットするゲームの開発に携わるぞ!" とか考えるんですよ」
とは言うものの、好奇心に誘われて日本に来る交換留学生、英語教師、ゲーム開発者は毎年後を絶たない。 「僕が真剣に日本語の勉強を始めたのは 1995~1996 年でした。 1997 年の後半に失業していたとき、"うーん、反対する彼女や嫁、子供もいないんだから、本気で日本語を勉強したかったら日本に行ったほうがいいんじゃないか?" って思って。日本に行って日本語を勉強しよう、って決めたんです。 でも生活する手段がなかったので、どうしても日本で仕事を見つける必要があった」
日本に住むために日本行きを決定するガイジン開発者が多いのですが、彼はそうではありませんでした。 彼は日本に住むことを目的として来日したわけではなかったわけです。 「初めて来日したときは日本についての知識もほとんどありませんでした。 大急ぎでゲームボーイ用の 3D デモを作ってArgonaut Software 社に送ったら、任天堂から 2 週間後に京都に来てエンジニアにデモを見せてくれないかと誘われたんです。 京都とその時に会った日本の人たちの印象がとても良かったので、 その第一印象に従って、"ここで生活し、働いてみよう" って決めたんです」
企業ごとの違い
日本のビジネス文化は、西洋人にとって恐ろしいものとして知られています。 日本の生活と仕事の紹介本は、厳しい上下関係、融通の利かない業務手順、日本の諺「出る杭は打たれる」といった内容で埋め尽くされていますが、幸運なことにゲーム業界はまだ気楽な雰囲気があるようです。 バーネットによると「オジギやケイゴはあまりないし、スーツを着ている人もいないです。 リーダーや上司も肩肘ばった所以外では結構気楽にやってます。 笑い話もできるし、飲みに行ったりもします。 まあ僕はガイジンなので、それ以上うまくはやれないですが、同僚だってみんなが思っているほど堅苦しくはないですよ」
また文化的な違いは時に争いの種となるとカスバート氏は言う。 「日本人上司は間違いなく、西洋社会の上司よりも社員に干渉してきます。そういう風に干渉されるのは "先天的に (上司のほうが) 優れている" と言われているようで、西洋的な考え方からすると不快に感じることが多々あります。でもほとんどの場合、その上司は単に職場の協調性と規則を保とうとしているだけで、理由もその部下の作業効率が高いからなんですよね。 私はいまだかつて、何の理由もなく不機嫌な日本人上司を見たことがありません」
訳注:「西洋的な考え方からすると不快に感じる」とか、日本人にはちょっと思いつかないと思いました
一方、日本で働く多数の社員にとって最大の問題と目されるのはその労働時間の長さだ。 日本の正しいエチケットでは、上司が退社するまで部下は退社してはならず、直属の上司が働いているうちは退社してはならないとされており、 このルールは、各人の仕事が終わっているかいないかに関係なく適用される。 タバレス氏は、このルールが日中の業務内容が「たるむ」原因だと言う。
「日本人は長時間働きませんよ」とタバレス氏。 「彼らはオフィスに長時間いるんです。これはほとんど文化的な要因によるものです。 日本では、米国学生の社交クラブで採用されているような「センパイ - コウハイシステム」が採用されています。 新入生、いわゆる新入りは基本的に誰かの下に配属されます。 その人物がコツなどを教える役目にあたり、その新入生に対する全責任を負います。逆に新入生はセンパイの言われたとおりに動く、というシステムです」
「風習として "センパイが全員帰るまでは退社してはいけない" というのがあるので、センパイや上司が退社するまでは帰らないようにしなければ、となるわけです。 このシステムは常に使用されているわけではないですが、一般的であるのは事実です。通常、これを守らない場合は出世も望めません。 日本の経済的状態のため、多くの企業では終身雇用が維持できなくなってきています。しかし彼らは、いまだに終身雇用が有効であるかのように振舞っているのです」とタバレス氏は続けます。
ここでバーネット氏の意見を紹介しよう。「古い慣習から抜け出すための武器として、自分がガイジンであることを利用することもできますね。ただ、実現するにはそれなりに時間もかかります。 私は入社したての頃は、同僚と同じ時間働くようにして、それから少しずつ短くしていきます。 周りの人に私の勤務時間に慣れてもらう時間が必要だからです。 私が一番に出社することが周囲の人に知れ渡れば、私が一番早く退社しても周囲に与えるショックが薄まります。 そしてもちろん、やるべき仕事は勤務時間内にすべて終わらせておくようにします。 仕事が滞っていたり、品質が一定の水準に達していなければ、私だって早く帰ったりしません」
「私の上司もまだ僕が日本的な勤務時間に合わせることを望んでいると思いますが、それでも最後には収まるものです。 実際、同僚にも "早く来て早く帰る" 僕のスタイルを取り入れるように仕掛けてみたりします。僕という前例があるのでそれに乗っかってしまえばいいと。 僕にとっても、仲間ができれば心強いですし」
日本の勤務時間と同じくらい、ゲーム業界の勤務時間も評判が悪い。 一日あたりの労働時間が長いとはいえ、1 日に働ける時間には限度がある。その点を考慮すると、日本よりも西洋のほうがひどい、とカスバート氏は言う。 「労働時間が一番長い国はまず間違いなく米国です。 3 年ほど前米国で働いていましたから当時のことも知っていますが、現地で働いている人の話を聞いても、週末も休まず働いて平日も恐ろしく長い時間働いていると聞きます (訳注: 私が仕事で取引のある IT 業界の某アメリカ企業も昼夜問わず、土日も関係なく仕事してます・・・南無)。 日本での仕事もかなりハードではありますが、さすがにそこまでひどくはありません」
勤務時間は企業によって大きく違うようだ。 バーネット氏のブログには連日徹夜する同僚のストーリーがあふれている一方、タバレス氏の次のような例もある「セガでは、平日朝 10 時から夜 11 時半まで働いて、社宅まで片道 1 時間 20 分かけて通勤していました。 それでも我慢できたのは、ひとえに日本に住めるという特権を心から楽しんでいたからですね。 2 度目の来日時に入った会社は、時折忙しい時期こそあれ就業時間としては一般的な範囲内でした」
後半に続く
所感をば。労働条件については稲船さんインタビュー翻訳で触れた「開発者のQOF (クオリティオブライフ) を向上させたい」という発言も併せて考えると現状の立体図の一部が見える気がしました。
また、センパイコウハイシステムと年功序列うんぬんについては考えさせられるところが多かったです。じゃあ西洋はどうしてるのかって考えると、既に実務レベルのスキル持ってるって事なんですかね。Gears Of War でおなじみの Epic Games はゲームのMODコミュニティ経由で就職した人の割合が全体の3割にのぼるなんて話もありましたし。即戦力だけが雇用される競争社会なのだろうか。
勤務時間についてはアメリカが一番ひどそうだというのは私も同感です。見ていてかわいそうなくらい働いている。これも稲船さんインタビューにあったけど、「あっちのひとは苦労してもゲームが当たったとき正当な報酬を得ているから救われるが、日本ではストイックにゲームを作り続けるだけで救いがないことがある、そのため開発者が夢を持つのを止めてしまうのではないか」という意見が瞬時に思い出されました。
まだ半分ですが残りも終わり次第UP予定です、今日の分、お楽しみいただければサイワイです
※誤訳、誤解、苦情などはコメントに残していただければ早めに対応します。
続き>>MADE IN JAPAN:西洋の視点から見た日本のゲーム開発 翻訳後半
目指してる間に労働時間はアメリカのほうが長くなってますね
長時間オフィスにいるだけでボケーっとして仕事進んでないのとかほんとに増えた
「センパイ - コウハイシステム」はどうなんだろう
あっちの話し聞くと未だに大学は別でもカレッジサークル
(ユニバだとカレッジとは言わんか、寮で色分けするのなんていうんだ?
が同じならそのラインに入るみたいな事聞くし 肌の色とか宗教も含めて
それに比べたら「センパイ - コウハイシステム」なんて親和的でいい風習だと思います
ボクはいやですが(-w-