バンナムの副社長のインタビュー。内容を読んで、ああバンナムには現状を把握しているえらい人がいるんだなと感じました。最後のページが興味深かったのでそこだけ引用します。
内容は実にその通りだと思うのですが、現状はガンダム、シリーズもの、そして追加コンテンツ商法のイメージが強いバンナム様。--御社は海外でも有力なフランチャイズを数多くお持ちです。海外の市場で生き残るためには、どのような施策や思想が必要だと思いますか。
今の日本のゲームメーカーは、自分たちは何ができてどうあるべきか、結構ぐらついているように思います。
やはり日本のゲームメーカーである以上、日本ならではというか得意な部分に根付いているべきだと思っています。日本人が指揮をとって米国向けの作品を作 るとしても、感覚や商慣習といった部分で限界があるでしょう。ましてや現地で開発会社を探して簡単に作れるほど甘くもないでしょう(LYEコメント:D3パブリッシャーの米国法人は果たしてどうなるか!)。
もちろん「鉄拳」のように日本で作っていても、海外市場を意識している作品はあります。でも、意識する必要はあるけれど、そこに向けて媚びようとか合わせようとかするのは、むしろしてはならないことだと思っています。
日本人がプロデューサーやディレクターとして指揮をとるのであれば、彼らが面白いと思って、なおかつ海外でも売れたいと思うものを作らなければ駄目でしょう。
弊社の場合には、自分たちの作品を世界中で売りたいから海外展開をするのであって、世界中で売るために作品の中身まで迎合する必要はないと思っています。
--そうすると、御社としては日本市場をもっと大きく育てる必要があると感じているということでしょうか。
そのとおりです。
ただ、先ほどのお話と矛盾しますが、日本のパブリッシャーが今の日本市場向けのみの作品を作るのは難しいとも思っています。
一通りのフランチャイズを新世代機でやってみて、今期はその結果が出ます。おそらく、今年の年末商戦の結果で今後の流れが一通りできあがるのではないでしょうか。そして、来年以降は、それに合わせたタイトルが作れるかどうかが勝負になると思います。
--多様化が進んでいる今のゲームの世界は、今後ある程度収束して落ち着くのでしょうか。それとも、さらに拡散して広がっていくのでしょうか。
基本的には拡散する方向だと思います。これはゲームに限らず、エンターテインメント全般がそういう方向に向かっている、いわば時代の流れというものでしょう。
最大視聴率50%のドラマや、みんなが必ず見に行く映画というのがなくなったのと同じように、みんなが持っていて同じハードで遊ぶというような、 ある意味単一化されてたゲーム機は、残念ながら登場はしないでしょう。本当は、そういうプラットホームが一番効率がよいですし売り上げも見込めますから欲 しいというのが、正直なところですけれどね(苦笑)。
その中でも、ある一定のボリュームがとれないものは消えて行くことになると思いますが、それは仕方がないことです。
ゲームとアニメは日本ならではの産業といわれた時期もありましたが、今では日本の優位性というものは完全に薄れました。
でも、ニンテンドーDSやWiiによるユーザー層の拡大や、インターネットを用いたサービスの多様化によって、もう一度日本がゲームの先進国といわれるようになれるかもしれないチャンスが来ていると思います。
映像という部分については、海外メーカーに日本のメーカーは後れをとっています。ですが、ゲーム性そのもので負けたかというと、絶対に違うと思います。ゲームの本質を作り込んでいって、なおかつディテールも作り込めるというのが日本企業の強みです。
電化製品や工芸品などで発揮される日本人ならではのこだわりは、ゲームにもあると思います。作り込んでいった先にあるディテールというのが日本人 ならではの味です。その最たる任天堂タイトルが世界中で新規ユーザーを獲得しているということは、今後はそういう作り込みに対して評価してくれる人たち が、世界中に増えていくことを意味します。
多様化が進む市場の中で日本ならではの新しいタイトルを創出することができれば、それは結果的にワールドワイドに展開できる商材になれると思っています。
我々がアメ車を作っても仕方がない訳で(笑)、日本人は日本車を作るしかない。そして、それが本当によいものならば世界中に通用すると信じています。
グラフィックについては負けているがゲーム性では負けていない、といっていましたが、色んな記事を読んでいるとどうしても「ゲーム制作プロセスと制作体制が根本的にちがうんじゃないか」という疑念が晴れません。
ValveのOrange Box に入っていた開発者の解説を見た人はきっと同意してくれると思いますが、最近の欧米人気ゲームはものすごい情熱を注ぎ込んで作られています (FPS と国民性やらグラフィックのテイストの文化的差は無視) 。
ゲームをプレイする人間がどうやったらゲームに没入できるか、直感的にプレイできるかといった実際的な点以外に、メインターゲット(つまり欧米的には Halo やMass EffectやRockBandが好きな人たち) が「ゲーム」に求めているものは何かを、「萌え」や "こういうキャラ出しときゃ売れるだろ的な打算" 抜きで突き詰めて作ってる会社が日本よりもはるかに多くあるように思います。
既に業界のガラパゴス諸島的な位置になってしまった日本のゲーム業界がこの先生きのこるにはまだドラスティックな変換が必要な気がします。